「アリの巣をめぐる冒険」と僕にとっての丸山宗利先生という存在

九州大学総合研究博物館の丸山宗利先生の近著,『アリの巣をめぐる冒険』を読了.

タイトルだけ見ると,先生のご専門の蟻や好蟻性昆虫のお話かなと思ってしまうかもしれないが,それだけでは決してなかった.
僕が読んでいて感じたのは,この本は,丸山宗利さんという一人の昆虫学者のこれまでの人生に関する伝記であるということだ.

私たちは普段,多くの方々に関わっているが,その人の断片を知るのみで,余程の幼馴染や仲の良い友人でない限り,なかなか知り得ない部分も多い.ましてや大学の先生など,その人の人生について,普段よくお話する先生ですら,ほとんど知らない.
そういう,見えない距離感を縮めてくれる意味でも,本書の存在は大きい.先生がどのように悩み,今に至ったのか,もちろん様々な制約によって,その全てを網羅していることなど決してありえないが,かなりの部分において,伝わってくるものがあった.少なくとも本における文章という表現媒体がそれを伝える上で最適な方法の一つであることを感じずにはいられなかった.

例えば,僕が普段生物研究部の友人とあれこれと言い合っている生物の種の問題,分類学とはと考えるところにも先生の考えが書かれており,まるで友人と議論する場に,先生も同席して,意見を言ってくださっているような気持ちを憶えた.

僕は,悩んだ結果理学部に入ることを決めた.その選択は今も間違ったとは一度たりとも思っていない.というか,今その判断ができるかと言えば,できない.ただ,悩みがないかといえば,むしろ悩みだらけで,将来のことも,研究対象やその内容のことも,語学力についてなども含め,挙げていけばきりがない.
自分では研究者になりたいと思っていても,今できる100%の努力ができているかといえば,全くできていない.ただ,とりあえずできそうなことや与えていただいたチャンスに手を出しながら,日々を送っていると言った状態だ.
そういった今の自分に対して,この本は,生半可な気持ちで生き物に臨んではいけないということを強く認識させた.


僕が丸山先生と初めてお会いしたのは高校生の頃だった.それから何度もお会いしたが,先生を裏切るようなことも何回もしてしまい,今でも苦い,思い出したくない記憶として残っている.
その苦さからかわからないが,正直な所,大学入学前に思っていた以上に,先生とはあまりお会いしていないし,どことない距離感と,尊敬の心と同時に,なんとも喩えようのない,一種の恐怖心を持っている.

ただ,最近感じるのは,僕自身がその程度で折れるぐらいなら,その程度の人間にしかなれないのである.先生が同じ大学にいらっしゃることを含めて,僕は今現在,色々な意味で恵まれた環境にいる.

この本は,人生を考えさせられる一冊となった.いつか,丸山先生と,科学的な意味での議論を交わし,勝負できるような存在になりたい.

深夜で頭がうまく回っておらず,文章にまとまりがないが,とりあえず,生き物と関わるすべての人,研究者を目指す人は必読の書であると感じる.中でも,私と同世代である,高校・大学生世代には強く勧めたい.

アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)

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